フィールド科学研究入門 2日目後編「ナイトハイク、ヒルにまたもやかまれて血がヌルリ」

 研修センター帰着後、すぐに入浴となった。大浴場はそこそこの広さが確保されているものの、さすがに男子学生20人弱が一斉に押しかけたら一杯になってしまう。少々出遅れたので、水道が空くまで脱衣場のところでしばし待機。やはり歩き疲れたら、足が伸ばせる風呂に入るのが一番。

 18:00から夕食。とても早いと感じるが、公共の研修施設の夕食は大抵このくらいの時間だろう。今夜のメニューはご飯、玉子スープ、黒豚ハンバーグ(フレンチフライ、人参添え)、きんぴらごぼう、マカロニサラダ。味はいかにも研修施設的。すなわち薄くて微妙。後から聞いた話、ここの研修センターを使うのは小中学生が多いため、それに合わせて作られているのではないかとのこと。ご飯と玉子スープはかなり大量に用意されていたが、僕と他数人がお代わりして食べたくらいでかなり余り気味。食欲の落ち着いた(?)大学生であるから、多少は量を減らして作っておいても良かったのかもしれない。残ったものはどうするのだろうか? 環境を学ぶところでまさか何も考えずにポイっ、てことはないはず。

 夕食の後、19:30からはナイトハイク。お尻を載っけられる程度の小さなシートを各自持って、暗闇の中をそろりそろりと歩いていく。晴れ渡った空にはたくさんの星が光っている。始めはセンターを出て舗装された道路を歩いていたのだが、すぐに右に折れて、森の中の道に入っていった。僕は視力は悪くても、暗闇の中で物を見分ける力は多少はあると自負している。それを以てしても森の中では本当に一寸先が見えない。凹みに足をとられるとひやりとする。この行程では必要最低限(先頭にいるセンターのMrさん)しか懐中電灯を持っていない。道の安全は保証されているが、少々怖いところもある。何人かは携帯電話の液晶画面を明かり代わりに短時間だけ使う技を用いていた。一見頼りなさそうな光量だが、本当の暗闇では、あれだけでもかなり周りが見えるようになるものだ。20分弱歩いて、芝生の広場に出た。広場を横断して、駐車場(おそらく午後に来た屋久杉自然館のもの)のところで腰を下ろした。

 ここで20分弱、仰向けに寝そべり、誰とも話をせずに過ごす。ちょうど空を流れ星がよぎった。普段は滅多に見ることができないのでわくわくする。20分間に流れたのは5個、僕はそのうち3個を観測できた。時間が経つと、Mrさんが何人か当ててどんなことを考えていたかを尋ねていた。星のことや自分のことを考えるのは順当だが、中にはあっさり寝ていたという人もいた。残りの時間でMrさんによる夜空の解説。いつも見ている空はせいぜい1等星、2等星しか見えないので、例えば夏の大三角などを見つけて結ぶのはとても容易だ。でも屋久島の空は星が多く、一見するとどれがいつも見慣れた星座なのかわからなくなってしまう。夏の定番であるはくちょう座でさえも、Mrさんの超強力レーザーポインターで指し示されるまで他の星にまぎれて全く見えなかった。

 ふと気づいたら、なんだか右足の指の間がぬるぬるする。星明かり程度では何が起こっているのか見ることもかなわず、とても気になりながら立ち上がった。駐車場からは夕方にも歩いた道を通り、研修センターに帰還する。時刻は21:10。これから夜は自由時間。23:00に本館が消灯されるまではいろいろな場所で過ごせる。だが、真っ先にしなければならないことがあった。明かりの下で右足を見ると、人差指と中指の間が血でべっとり濡れていた。結構血が出ているのに痛みを全く感じないところから、どう見てもヒルに咬まれたとしか思えない。さてどうしたものかと考えていたらちょうどY教授が通りかかったので相談すると、近くにいた研修センターのMrさんなども集まってきた。ヒルに咬まれただけなら血があふれる以外に問題はないが、一応消毒。センターのある方曰く、生まれてからずっと、島に30年近くいるがヒルに咬まれたことはないとのこと。島にやってきて2日目にして2度も咬まれるとは実に珍しい。足の手当終了後、次にしたのが2日分の洗濯。洗濯機のある場所に行くと、ちょうど5人ほどで洗濯物を放り込んでいたので、一緒に入れてもらう。僕の分でぴったり一杯になった。それからは23:00頃まで館内をうろつく。

 部屋に戻ると0:00から1:00まで、同室の人とちょっとした宴会になった。

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