西鉄甘木線停車場実見 - 2023/11/24実施

学校前駅 がっこうまえ Gakkō-Mae

記事作成
2023/11/29
更新
2023/12/27(ページ完成)

学校前駅について

西鉄電車にいくつかある抽象的駅名です。 当駅の開業(1915年(大正4年)10月15日、三井電気軌道による宮の陣~北野間開業)時点の駅名は「宮ノ陣学校前」ともう少し具体的でしたが、 1939年(昭和14年)12月31日に抽象度が上がって「学校前」に改称されました。 これと同じレベルで抽象的な名前は、同じ久留米市内の試験場前駅があります。 ちなみに、試験場前駅は来年、2024年3月にすぐ近くの著名な施設の名前を取って「聖マリア病院前駅」と改称し、具体度が高まります。 来年3月には両駅よりあと1段階抽象度が高い名前の駅・桜並木駅ができます。ここは周囲の地名ではなくランドマーク的な存在を具体的名称ではない形で指しています。

それはさておき、学校前駅は本郷駅と並んで非常に狭いホームを持つ駅として有名です。もちろん屋根はありませんし、 本郷駅と違って、ホームの大部分は鉄骨の上にコンクリート板をかけたホーム面下スルー構造です。盛り土で作られたホームは19.5m級0.5両分程度しかないように見えます。 配線は島式ホーム1面2線で、1番線を宮の陣(久留米・大牟田)方面の列車が利用し、2番線を北野・甘木方面の列車が利用します。 本郷駅や金島駅と同様、乗り場の番号は付いていません。

学校前駅は、西鉄における単線の交換駅の基本を備えた駅であることから、運転業務に携わる職員の信号設備手動取り扱い訓練に用いられているとの話があります。 駅の信号・ポイント(転てつ器)を制御する連動装置を、駅設置の連動制御盤でてこスイッチ(左右の一方、もしくは両方にひねって操作するロータリースイッチ。2接点・3接点に相当) や押しボタンを取り扱うことにより操作する実地訓練をすることがあるのかもしれません。

構内配線略図

学校前駅の構内配線は次のようになっています。

図はSVG(Scalable Vector Graphics)形式です。クリックすると拡大できます。

学校前駅構内配線略図

信号機名称一覧

学校前駅信号機名称一覧
番号名称信号灯器のタイプ付属する灯器備考
1RA下り場内(1番線・上方の信号・主)2灯式(進行・停止)
1RB下り場内(2番線・下方の信号・副)2灯式(進行・停止)
2L上り出発(1番線)2灯式(進行・停止)
3L上り出発(2番線)2灯式(進行・停止)
4R下り出発(1番線)2灯式(進行・停止)
5R下り出発(2番線)2灯式(進行・停止)
6LA上り場内(1番線・下方の信号・副)2灯式(進行・停止)
6LB上り場内(2番線・上方の信号・主)2灯式(進行・停止)

2本の線路がともに北野・甘木方、宮の陣(久留米・大牟田)方双方からの到着、双方への出発に対応する万能なつくりです。 通常は朝夕の列車交換にのみ用いられますが、甘木線内で一部区間の運転見合わせが発生した場合や、天神大牟田線でダイヤ乱れが発生した場合は、 当駅で臨時に列車交換が実施されたり、信号設備を活用して折り返し運転が行われることもあります。

当駅は双方向とも見通しが良いことから、遠方信号機は設置されていません。

構内の様子

学校前駅ホームと駅を出て行く甘木行普通列車

学校前の特徴を端的に表す写真です。本郷駅と同様のホームの狭さで、安全なスペースが点字ブロック1枚分しかありません。 点字ブロックの両側すぐのところにかつては白線が描かれていました。

学校前駅ホーム全景

学校前駅のホームを駅の外から見た写真です。屋根がなく、ホームの大部分が鉄骨の土台にコンクリートの板を載せて作られていることがよくわかります。 背後にあるのが久留米市立宮ノ陣小学校の体育館です。「学校前」の「学校」とはこれのことです。

駅ホームもスリムですが、そのすぐ横を走る道路もこの学校前駅の前後だけ1車線と大変狭くなっており、 それでいて交通量は比較的多いので、歩いたり写真を撮ったりするのはなかなか大変です。

学校前駅駅舎全景1:北側道路より 学校前駅駅舎全景2:西側の駅入口より 学校前駅駅舎全景3:駅舎・ホーム・学校の位置関係

学校前駅の駅舎全景です。側面から見ると側壁が逆台形型になるようカットされていて、一風変わった見た目になっています。 駅舎の駅名標は側面側だけにあり、駅入口の正面には特に何も掲げられてはいません。道路から踏切を渡ってすぐ曲がって駅舎の入口に到達するので、掲げてもあまり有用ではありません。 側面写真の背後が宮ノ陣小学校の校舎です。大変近いです。

学校前駅下り出発信号機

駅敷地が大変狭いため、出発信号機の設置も苦労している感があります。2番線の下り出発信号機(写真右側)は狭い着発線間に押し込むように建てられています。 下の信号機の背後側からの写真を見ると、設置空間の狭さがさらにわかるかと思います。

学校前駅下り出発信号機を背中側(宮の陣・久留米・大牟田方)から撮影

信号機の背後側からの写真です。右手側に「出発B1」と書かれた看板が写っています。これは出発信号機に対するATS地上子のうちB1点(25km/h照査)に対応するものです。 甘木線のATS地上子は、天神大牟田線における設置法・命名法と異なる点がいくつかあるようですので、今後調べてみたいと思います。

「出発B1」の左側、朽ちかけた木製柱は代用手信号現示位置を示す柱です。信号機に異常が発生した場合は、転てつ器の状態を確認しつつ、この位置に運転係員が立って手旗やカンテラで手信号を現示します。

学校前駅上り場内信号機

学校前駅の上り場内信号機です。甘木方面の列車が用いる2番線への信号機が一段高く掲げられています。

場内信号機の柱の真下あたりに「停車場区域標」と書かれた小さな標柱があります。管理上、この地点が学校前駅の構内の始まりであることを意味します。 その横にある黒い箱はインピーダンスボンドと呼ばれるもので、軌道の接合部分で絶縁している部分に設置されています。 直流電化されている区間で電車の走行のために使った直流電流(帰線電流)と列車検知に用いる軌道回路の交流電流を分け、 帰線電流をインピーダンスボンドを介して隣接する軌道の方へ絶縁を超えてつなぎつつ、列車検知用の交流電流を遮断して絶縁を超えないようにして、列車検知を正しく行えるようにする役割を果たします。

学校前駅上り出発信号機

学校前駅の上り(北野・甘木方)出発信号機です。下り出発信号機の建植位置に比べると敷地に余裕はありますが、それでも2番線の信号機の設置位置の脇に境界柵が来ています。 2番線の信号機が少し低めに取り付けられているため、信号柱の上の部分がだいぶ余っています。

学校前駅下り場内信号機

学校前駅の下り(宮の陣・久留米・大牟田方)場内信号機です。下り宮の陣方面の列車が用いる1番線への信号機が一段高く掲げられています。

学校前駅駅舎内1:出札・改札口全景

学校前駅の駅舎内を見ます。駅舎入口すぐ右手にベンチとかつての出札窓口、ICカード入場用簡易改札機があります。 改札口側には、以前からある銀色の運賃・乗車券類回収箱、駅集中管理化に伴い設置された乗車駅証明書発行機、遠隔インターホン(モニター設置型)兼運賃等回収箱、 ICカード出場用簡易改札機が設置されています。

学校前駅掲示:駅務員配置時間帯案内

駅事務室の窓には、駅務員配置時間帯が掲出されていました。 学校前駅への駅係員定期巡回は、2023年4月1日以降、午前中の約30分(甘木方面への列車1本分)だけとなっています。

学校前駅掲示:不正乗車への警告(日本語・ベトナム語・中国語・英語)

駅事務室の窓にはさらに、不正乗車に対する4か国語での警告も掲出されていました。 警告文は本郷駅や金島駅にあったものと同等の内容で、鉄道営業法第18条第2項および鉄道運輸規程第19条に定める増運賃の徴収、 および警察への通報(=警察による取り調べの結果如何では公訴提起の上刑事処分が行われる可能性がある)を行うこと、 また、監視カメラにより録画されている旨、強い口調で書かれていました。

学校前駅ホームから上り北野・甘木方面を見る

ホーム中ほどから上り北野・甘木方面を見ます。出発信号機の設置位置の高さの違いが見えます。 線路間にあるATS地上子のうち、右側1番線に見える手前が上り方向のB2点地上子、奥のものが同じくB3点地上子です。 左側2番線のATS地上子群は、最も手前が下り方向のB2点地上子、その少し奥、「15」と書かれたものが上り方向のB2点地上子、更にその奥がB3点地上子です。

停止位置目標は、線路脇に緑色の印とともに「2」と書かれた札が立っています。この目標からホームはその先に約0.7両分あり、ホーム端付近にB3点地上子があります。 地上子を移設すると、19.5m級3両が入線可能になりそうです。

学校前駅ホームから下り宮の陣(久留米・大牟田)方面を見る

今度は反対に下り宮の陣(久留米・大牟田)方を見ます。2番線の出発信号機を頑張って建てている様子がよくわかります。 こちらは1番線のB2点地上子に対して「B2出発」の標示と「15」と書かれた注意喚起の表示があります。

学校前駅のホーム駅名標

線路脇の駅名標をアップで撮りました。本来ホームに設置されるべき駅名標も、本郷駅と同様に線路の向かい側に長い脚を立てて設置されています。

他の駅の情報

各駅の詳細は下のリンクから参照ください。