西鉄甘木線停車場実見 - 2023/11/24実施

本郷駅 ほんごう Hongō

記事作成
2023/11/27
更新
2023/12/10(説明一部修正)
2023/12/02(ページ完成)

本郷駅について

本郷駅は甘木駅から3つめの駅で、最初の列車交換可能駅となっています。構造は島式ホーム1面2線で、そのホームが大変狭いことで有名です。点字ブロック(1枚につき30cm四方)がホーム中央に1列分しか敷けず、かつて安全な部分を示すために使われていた白線(白の破線標示)はその点字ブロックの両脇すぐのところに描かれていたくらいの狭さです。写真を利用してホーム幅を算出したところ、両側の縁と縁の間が約2mとの結果が得られました。

ホーム長は約60m、着発線も80mくらいはありそうですが、ATS地上子や信号機の設置位置を勘案すると、現在の着発線有効長は約40m程度となっています。ホームには乗り場番号や方面の案内は特にありませんが、1番線(駅本屋からの通路を通って右手側)が下り宮の陣・久留米・大牟田方面、2番線(通路通って左側)が甘木方面となっています。

この本郷駅では、平日ダイヤの朝に久留米・宮の陣方面から来る列車2本が折り返します。信号設備もそれに対応するようにできています。この2本に限り2番線に到着後そのまま折り返しとなるため、下り列車ではありますが2番線からの発車となります(沿線の方からの情報)。

構内配線略図

本郷駅の構内配線は次のようになっています。

図はSVG(Scalable Vector Graphics)形式です。クリックすると拡大できます。

本郷駅構内配線略図

信号機名称一覧

本郷駅信号機名称一覧
番号名称信号灯器のタイプ付属する灯器備考
1R下り場内2灯式(進行・停止)1番線へのみ進入可
2L上り出発2灯式(進行・停止)
3R下り出発(1番線)2灯式(進行・停止)
4R下り出発(2番線)2灯式(進行・停止)
5LA上り場内(1番線・下方の信号・副)2灯式(進行・停止)
5LB上り場内(2番線・上方の信号・主)2灯式(進行・停止)

本郷駅の信号配置の特徴は、一部の折り返しのみに対応する形にしている点にあります。 宮の陣(久留米・大牟田)方からの列車は1番線・2番線の両方を使って折り返しができる一方、 甘木方面との間を行き来する場合は甘木行が2番線、宮の陣(久留米・大牟田)方面の列車が1番線の利用に限定されます。 また、甘木方面から来た列車は本郷駅では折り返しができません。

列車の運行形態から考えて必要十分な数だけの進路(列車が駅に出入りできるルート)を用意し、保安システムの保守の手間を増やし過ぎないのは良い方策と言えます。

構内の様子

写真をクリックすると拡大できます。

本郷駅ホーム写真・列車交換

いきなりですが、本郷駅での列車交換の光景です。かなり迫力があります。

日中時間帯の列車交換は、自分の手元でダイヤを参照できる限りでは1997年1月15日改正時点ですでに北野駅・本郷駅と定まっており、 雑餉隈~下大利間の高架工事に伴う天神大牟田線の所要時間微増につき、 一時的に交換駅が学校前駅・金島駅・甘木駅にずらされていた2012年3月24日改正~2021年3月13日改正の前日までの約9年間を除いて、 時刻が前後にずれつつも交換駅設定が維持されています。

余談ながら、別のページで紹介する学校前駅もホームが本郷駅と同程度の幅しかないため、日中の交換駅パターンがどのようになろうとも、 必ず1駅はこのような迫力ある列車交換風景が見られることになります。

本郷駅の駅舎とホーム

本郷駅のホームと駅舎の配置関係です。駅舎とホームは構内踏切で結ばれています。ホームが大変狭く屋根がないため、椅子が設置された待合スペースは改札外、 もとの有人出札窓口の前にあります。

本郷駅の駅舎内(乗車駅証明書発行機)

駅舎入口の右手側に乗車駅証明書発行機とICカード簡易改札機の入場処理機、遠隔対応用インターホン(簡易型)、時刻表があります。

写真のような乗車駅証明書発行機が本郷駅はじめ、自動券売機のない集中管理駅(時間帯無人駅)に配備されたのは駅集中管理システムが導入された2020年10月1日以降のことで、 本郷駅が昼間時間帯無人駅となって、終日無人駅を経て集中管理駅および時間帯無人駅に「格上げ」されるまでの6年間は、コピー用紙に「乗車駅証明書」と印刷され、 駅改札スタンプを押印したものが乗車駅証明書入れに収められ、乗客が箱を開けて取り出していました。

本郷駅の駅舎内(事務室側)

駅事務室の側には出場用のICカード簡易改札機ときっぷ・運賃入れの箱があります。窓に貼られている掲示物のうち、右側のものは『警告』と記されたかなり物々しい内容の掲示となっています。 掲示の詳細は学校前駅のページを参照ください。

左側の掲示は本郷駅から少し離れたところに整備された、大刀洗町が管理する送迎自動車待機場の案内です。

本郷駅の乗車駅証明書箱(2015年10月11日) 本郷駅駅事務室(2015年10月11日) 本郷駅改札口(2015年10月11日)

駅舎内周辺を2015年10月11日に取材した際の写真をいくつか紹介します。8年経った今は、役目を終えた乗車駅証明書に関する案内が消えて箱が撤去され、 さらに改札正面にあった「終日無人化のお知らせ」の看板は取り外されて枠だけになっていました。

本郷駅前送迎自動車待機場の案内

本郷駅の信号機調査にあたり送迎自動車待機場の前を通るため、ついでに写真を撮影しました。一般車待機スペース6台分・車椅子利用者向け待機スペース1台分があり、 利用者向けの案内板が立てられています。一見すると駐車場のように見えるため、長時間の駐車をしないよう要請する文言と、目的外利用と判断した場合には警察等へ照会する旨の注意書きがあります。

この送迎待機場は2021年4月1日から供用開始されたようです。本郷駅の付近は道が極めて狭く、自動車による送迎が実質不可能な状態でした。 駅前は小さい駐輪場以外は広場がなく、駐輪場の大半をつぶしてもまともな広さの敷地を得られないため、近くの田んぼだった土地を買い上げて町管理の送迎自動車待機場としたようです。

自動車がなければ生活が難しいこのあたりの街において、できる限り公共交通機関との連携利用がしやすいよう施設整備を進める方針は大変良いものだと思います。

本郷駅前送迎自動車待機場全景 本郷駅前送迎自動車待機場案内板
本郷駅の宮の陣方近くにある木製の架線柱

本郷駅の上り場内信号機の近くに木製の架線柱があります。天神大牟田線と太宰府線はすでに全てコンクリート柱か鋼管柱、トラス柱になっていますが、 甘木線では各所で木柱が現役です。さすがにもう無くなっているだろうと思っていたら、そこそこ見掛けたので驚きました。 管理に結構手間がかかると思うんですがどうでしょうか。

本郷駅の上り場内信号機

本郷駅の上り場内信号機です。1番線、2番線ともに進入できるため、信号機が2つ掲げられています。高く掲げられているのが2番線(甘木方面へ進出可能)への場内信号機、 一段下に掲げられているのが1番線(こちらからの到着だと宮の陣方への折り返しのみ)への場内信号機です。

実は、進路の数だけ信号機を用意する設置方法は、西鉄においては甘木線以外ではあまり使われていません。 天神大牟田線ではもっぱら1基の場内信号機や入換信号機に進路表示器をつけて場内進路開通方向を示しており、信号機が別に設けられているのは、 逆線進入での到着進路がある駅の一部(筑紫駅・大善寺駅)と宮の陣駅の1番線上り場内(甘木線方面)、二日市駅の1番線・2番線上り出発(天神大牟田線福岡方と太宰府線太宰府方の振り分け)くらいです。 (津福駅だと5灯式の信号機が2つ並んでいたりしますが、あれは第一場内信号機で進路を振り分けた後の1番線・2番線それぞれに対する第二場内信号機であるため意味合いが異なります。)

本郷駅の下り場内信号機

本郷駅の下り場内信号機です。こちらからは1番線だけに進入できるため、信号機は1つだけです。

本郷駅の下り出発信号機2基

本郷駅のホームから下り宮の陣方を見ます。1番線、2番線それぞれの出発信号機が建っています。 このうち、写真右側の2番線の下り出発信号機は平日に限り1日2回、本郷駅折り返し列車の出発時にだけ切り替わります。

1番線、2番線の線路間に見える箱がATS地上子です。近くのケーブル接続箱に薄れた文字で記されたテプラ表記の内容を読むと、これらはB3点に設置した地上子のようです。 地上子呼称と設置位置からして、出発信号機が停止現示の時に0km/hの速度照査信号を送出する地上子であると思われます。 天神大牟田線では同等の地上子設置位置をB2点と称するので、甘木線では信号機を防護するATS地上子の設置方式が異なるのかもしれません。

本郷駅の上り出発信号機

反対側、甘木方を向くと2番線にのみ出発信号機があります。1番線の側は本郷駅から先へは進むことができませんので、 ホーム端付近の向かって右側線路際に、列車が停止すべき位置の限界を示す白地に黒十字の「列車停止標識」が設置されています。 実際には、その手前の緑三角印がある停止位置目標が唯一にして最大限界の停止位置で、その先にATS地上子があることから、 停止位置目標から先へは基本的に入り込めません。

本郷駅1番線の過走防護ATS地上子接続箱

上記写真のATS地上子の接続箱には「過走防護1#-B3」との記載があります。1番線甘木方の(信号保安上の)終端を超えて列車が進んでしまわないよう、 この位置で0km/hの速度照査信号が送出されていると考えられます。地上子の性質と西鉄ATSの動作特性上、0km/h信号が常時送出されていても不思議ではありませんが、 実務上は本郷駅の上り場内進路がいずれかの方向に開通した時に送出すれば足ります。実際にどちらで実装されているかは不明です。

本郷駅の脚が超長い駅名標

最後に、本郷駅を有名にしている要素の2つ目、ホームの反対側に超長い脚を生やして設置されている駅名標です。 ホームに立つ乗客の視線の高さに来るよう頑張っています。

今までの写真をご覧になれば自明ですが、本郷駅の超狭いホームに駅名標を立てるとホームの中央部、とりわけ点字ブロックを完全につぶしてしまって駅の安全上大変よろしくありません。 何よりそんな置き方では客から見えません。そのためこのように頑張った立て方をしていると思われます。

本郷駅の脚が超長い駅名標(2015年10月11日)

駅名標の下の空間は一応広告スペースとの位置付けで、スペース設置当初から長らく地元新聞社・西日本新聞社が本郷駅を含むスペース設置駅に広告を出していました。 2015年の時は九州国立博物館で行われていた西日本新聞社主催の展示「美の国 日本」の案内が出ていました。ここ数年はどの駅も空白となっています。

他の駅の情報

各駅の詳細は下のリンクから参照ください。