西鉄甘木線停車場実見 - 2023/11/24実施

宮の陣駅 みやのじん Miyanojin

記事作成
2023/11/29
更新
2024/02/04(記事完成)

宮の陣駅について

福岡県久留米市宮ノ陣五丁目にあります。地名はカタカナの『ノ』で表します。甘木から来た甘木線と、福岡(天神)から走ってきた天神大牟田線がここで合流します。

開業当初からこの形だったわけではなく、甘木線の前身(三井電気軌道)が筑後川を渡る際には、今の西鉄の筑後川橋梁の東側にある宮ノ陣橋(今架かっている同名の橋の近くにあった古い橋)に併用軌道を敷設して渡っていました。 その後、輸送力増強のために甘木線の架線電圧の昇圧(直流600V→直流1500V)と大牟田線との線路連結による直通、筑後川治水工事ともかかわる橋の架け替えに伴う駅の微妙な移転(下流側)を経て今に至ります。

宮の陣付近の線路敷設状況の変化を調べようと思いましたが、調査結果の日付に数か月レベルの食い違いがあり、どちらが正当か直ちには確定できませんでした。調べがついたら書き足すかもしれません。

駅は2面3線の構造で、分岐点の付け根にホームがあるため、甘木線が発着する1番線・1番乗り場が急カーブで分かれています。 天神大牟田線の側は待避設備等は特に持たない構造となっています。 甘木線の側も構内が単線であるため、久留米方から甘木線への列車が到着する際には、学校前駅から列車が出発できないように学校前駅の出発信号機を定位に鎖錠する(停止信号から変わらないようロックを掛けてしまう)ようです。

構内配線略図

宮の陣駅の構内配線は次のようになっています。

図はSVG(Scalable Vector Graphics)形式です。クリックすると拡大できます。

宮の陣駅構内配線略図

信号機名称一覧

宮の陣駅信号機名称一覧
番号名称信号灯器のタイプ付属する灯器備考
1R下り場内(1番線)2灯式(注意・停止)
1L上り出発(1番線)2灯式(進行・停止)(1番乗り場転落検知マット警告灯)
2R下り場内(2番線)5灯式
3L上り出発(3番線)4灯式(減速現示可能)
5R下り出発(1番線)3灯式急緩行選別灯(3灯式)(1番乗り場転落検知マット警告灯)
6R下り出発(2番線)4灯式(減速現示可能)
7L上り場内(1番線・下方の信号・副)2灯式(注意・停止)
8L上り場内(3番線・上方の信号・主)4灯式(減速現示可能)

この形の分岐駅としては一般的な設置法です。甘木線甘木方面の列車と天神大牟田線下り久留米・大牟田方面の列車がかち合う(進路が競合する)場合は、 2番線の下り場内信号機が警戒現示となり、2列車が安全に同時進入できます。

土曜ダイヤ・日祝ダイヤだと、下り急行列車と甘木行普通列車を同じくらいのタイミングで入線させて短時間で接続を取るダイヤとなっています。 その時間差が1分程度のため、定刻であれば下り急行列車はスムーズに到着できますが、甘木行が少し遅れると過走余裕が取れなくなるためすぐに警戒現示に抑えられてしまいます。 そして急行のダイヤは警戒現示による進入を前提としていないため、当然ながら遅延します。

構内の様子

宮の陣駅1番乗り場から分岐点の方向を見る

甘木線の列車が発着する1番乗り場から、大牟田線へ合流する方向を見ます。非常に急なカーブを描いています。 曲線標がホームから見えませんでしたが、曲率半径130mだった北野駅と同じくらい車両とホームの間が空いていたので、おそらくそのくらいの半径だと思われます。

宮の陣駅1番乗り場と2番乗り場を結ぶ連絡通路

1番乗り場と2番乗り場がつながっている側の端(階段)あたりから30mかそこらしか離れていないこの通路の場所で、すでに乗り場間が12mは離れています。 ちなみに、この通路は2番乗り場の列車の福岡寄りの車両から甘木線へ乗り換えるための細い連絡通路です。

宮の陣駅1番乗り場と2番乗り場の大牟田方端部

1番乗り場と2番乗り場がつながっている部分は大変広くなっています。こちら側に改札口や福岡(天神)方面の3番乗り場へ行くための下り階段があります。 写真左上方、屋根から吊り下げられて設置されている2番乗り場側を向いたミラーは、2番乗り場停車中の列車の運転士から階段を上ってくる利用客の姿を確認できるように取り付けられています。 ミラーなしですと階段の上まで来ないと確認できませんが、このミラーのおかげで、階段の真ん中あたりにいるお客さんの姿を見えます。

宮の陣駅2番乗り場から大牟田方を見る

2番乗り場の福岡方に立って大牟田方を見ます。写真左から直角に刺さっているように見える線路(架線柱が立っているあたり)が甘木線です。 地図で見ると甘木線が大牟田線に対して60度くらいの角度で刺さっている感じです。

ちなみにこの写真の目の前に立っているものは、2番線の出発反応標識(レピーター)です。 2番線の出発信号機が宮の陣駅の階段の先にあり、車掌の乗務位置からは全く視認できないため、レピーターがここの他に大牟田方から3両目付近にあと1個設けられています。 このレピーターは5両編成~7両編成の列車に対して有効です。福岡方が少しカーブしているのに対応して、線路と反対側の端に寄せて地面から生える形で設置されています。

宮の陣駅3番乗り場から1番乗り場・2番乗り場を見る

3番乗り場から撮ると、甘木線の急曲線での分岐ぶりがもう少し分かりやすいと思います。ただ、やはり地図で見つつ現地を観察するのが一番体感しやすいです。

宮の陣駅1番乗り場の下り出発信号機

1番乗り場の下り出発信号機と2番乗り場の出発信号機です。1番乗り場側が3灯式、2番乗り場は4灯式(減速現示可能)となっています。 この先にある保守用車留置用の側線が安全側線のような役目を果たしており、甘木方からの列車が到着する時には分岐器がそちらに開通しているため、 天神大牟田線の下り列車が同時接近している時もお互いに信号現示の制限を受けることはありません。

宮の陣駅1番乗り場の下り出発信号機(拡大)

1番線の下り出発信号機を拡大します。信号機の下に急緩行選別灯があり、1番線から出発する列車に対しても運行上の列車選別設定を通知することができます。 ちなみに2番線や3番線の出発信号機には設置されていません。なお、通常のダイヤでは1番線から列車選別が「急行」となる列車(急行列車)や 「特急」選別となる列車(特急・回送)が出ることはありませんので、上の「⦿」(外丸に中点・特急選別)や中央の「○」(丸・急行選別)は点灯せず、一番下の「/」 (右上から左下への斜線・普通選別)のみが点灯します。

信号機奥の架線柱に取り付けられている「速度制限『切』」の標識は、甘木線最高速度制限装置のスイッチを切るよう指示するものです。 装置のスイッチが入ったままの場合、甘木線の最高運転速度である65km/hを超えると非常ブレーキが動作してしまいます。 宮の陣以南の天神大牟田線を走る時は、普通列車であっても駅間最高運転速度が80km/h以上指定なのがザラ、区間によっては100km/h指定になっていることがありますので、 65km/h制限ですと目と鼻の先の筑後川橋梁を渡り切る前にいきなり引っ掛かってしまいます。

宮の陣駅1番乗り場への甘木行き普通列車の到着光景

1番乗り場への到着時の様子はこのようになっています。天神大牟田線の上り線からこちらへの渡り線と、1番線への分岐、 保守用車留置線への分岐のための転轍機合計4基を動かす必要があるため意外と大掛かりです。

もっとも、通常は運行管理システムによる遠隔自動制御ですし、駅で連動制御盤のてこを直接操作して操る際も、よほどの特殊な事態でもなければ1番場内のてこ1つを倒すだけで良いです。 そしてこの設置パターンですと、渡り線側の2基1組、1番線側の2基1組がそれぞれ規定の方向へ同時に動作する「2動」の配線になっていると思われますので、 転てつてこを扱う場合も2個をパチッと操作するだけです。

奥には、場内信号機が2基見えます。高く掲げられている4灯式の信号は3番線(天神大牟田線上り)、その下の2灯式が1番線(甘木線)へのものです。

宮の陣駅上り場内信号機(2015年11月7日撮影)

取材日は宮の陣駅乗り換えで甘木線の方面を往復したため、上り場内信号機を正面から見ることができていません。 そのため、2015年11月7日に撮影した際の写真を紹介します。

1番線の場内信号機は注意信号と停止信号を現示可能です。3番線の場内信号機は減速信号の現示が可能なタイプです。

宮の陣駅1番線上り出発信号機

1番線の上り(北野・甘木方面)出発信号機です。2灯式で、停止信号(赤)と進行信号(緑)を現示します。写真中央部に溶け込むように立っている、反対側を向いた信号機が下り場内信号機です。

宮の陣駅1番線下り場内信号機(2015年10月4日撮影)

1番線の下り場内信号機については取材日には撮影できませんでしたが、2015年10月4日に撮影した写真がありましたのでご紹介します。 下り場内信号機は停止信号と注意信号を現示できる2灯式となっています。

また、この写真から、甘木線の線路が天神大牟田線に対してかなり急な角度で接近していることがお分かり頂けるかと思います。

宮の陣駅1番線上り出発信号機(拡大)

1番線の上り(北野・甘木方面)出発信号機を拡大します。 信号機手前の架線柱に取り付けられている「速度制限『入』」の標識は、先ほどの『切』とは逆に、甘木線最高速度制限装置のスイッチを入れるよう指示するものです。

信号機の下部、およびこちらからみて信号機の左側・同一の高さに反対向きに取り付けられているのは、北野駅にあるのと同様の転落検知マットの警告灯です。

さらに、代用手信号現示位置の杭や25km/hの速度制限標など、意外とてんこ盛りな配置となっています。

宮の陣駅1番線に列車が停車している状態 宮の陣駅1番線の車両・ホーム間隙間の状況

この1番線に列車が停車している時の様子がこの写真になります。写真をタップ(クリック)して拡大するとさらに分かりやすくなりますが、非常に隙間が大きくなっています。 いずれ宮の陣駅1番線も、北野駅で実施しているような転落防止対策工事が行われるかもしれませんが、現時点では特段の工事情報はありません。

宮の陣駅3番線出発信号機

3番線(天神大牟田線上り:二日市・福岡(天神)方面)の出発信号機です。減速信号の現示が可能な4灯式の信号機が設置されています。

宮の陣駅2番線場内信号機(裏向き)

2番線(天神大牟田線下り:久留米・大牟田方面)の場内信号機です。こちらは減速信号と警戒信号を現示するため、5灯式の信号機が設置されています。

信号機の真横地面に停車場区域標、その横にはインピーダンスボンドが設置されています。また、駅の福岡方が19‰(パーミル)の勾配(福岡方が低い)となっているため、勾配標も設置されています。

宮の陣駅上り・8両編成時先頭車停止位置の乗車目標

最後に、宮の陣駅の北端にある乗車目標です。現在の西鉄天神大牟田線における最大両数・7両の停止位置目標の先にあるこれらは、 2010年3月27日ダイヤ改正で廃止された8両編成で運転する上り列車(2001年1月20日以降は快速急行列車2本のみ。それ以前は下大利・春日原・大橋を通過する朝ラッシュ時上り急行列車の一部) のために使われていた乗車目標でした。今はこの位置に停車する両数の列車はありません。これと同様に使われなくなった乗車目標は、二日市駅5番線(7番乗り場)の福岡方の端に残っています。

他の駅の情報

各駅の詳細は下のリンクから参照ください。