北野駅について
北野駅は甘木線内で最も乗降客が多く、線内に2つだけしかない終日有人駅の1つです。久留米市北野町(市町村合併(平成の大合併)以前の三井郡北野町)の中心駅となっています。 列車交換が終日行われる他、久留米方面からの最終列車が当駅で折り返します。2001年1月20日ダイヤ改正以前は当駅での夜間滞泊も設定されていました。 北野駅折り返しとなる最終列車は2番線到着後、そのまま逆方向に出て行く形となっています。
駅構造は線内で唯一の相対式ホーム2面2線で、甘木方面の列車が利用する2番乗り場へは構内踏切を渡って移動するようになっています。 駅が曲率半径130mの急曲線上にあるため、ホームと車両扉部との隙間が、隙間どころか穴と呼べるほど大きく空いている箇所が複数あります。 隙間への転落事故を防ぐ観点から、2020年2月中旬から3月末にかけてホーム改良工事が行われ、ホーム嵩上げと乗降口部分の隙間を縮小するための張り出しゴム設置、および乗降口でない部分への固定柵設置が実施されました。 (工事期間情報は当駅利用の方より)
構内配線略図
北野駅の構内配線は次のようになっています。
図はSVG(Scalable Vector Graphics)形式です。クリックすると拡大できます。
信号機名称一覧
番号 | 名称 | 信号灯器のタイプ | 付属する灯器 | 備考 |
---|---|---|---|---|
(1RA / 1RB) | 下り遠方 | 2灯式(進行・注意)四角背板 | ||
1RA | 下り場内(1番線・上方の信号・主) | 2灯式(進行・停止) | ||
1RB | 下り場内(2番線・下方の信号・副) | 2灯式(進行・停止) | ||
2L | 上り出発(1番線) | 2灯式(進行・停止) | (1番乗り場転落検知マット警告灯) | |
3L | 上り出発(2番線) | 2灯式(進行・停止) | ||
4R | 下り出発(1番線) | 2灯式(進行・停止) | (1番乗り場転落検知マット警告灯) | |
5R | 下り出発(2番線) | 2灯式(進行・停止) | ||
6LA | 上り場内(1番線・下方の信号・副) | 2灯式(進行・停止) | ||
6LB | 上り場内(2番線・上方の信号・主) | 2灯式(進行・停止) | ||
(6LA / 6LB) | 上り遠方 | 2灯式(進行・注意)四角背板 |
北野駅は2本の着発線がいずれも両方向からの進入、両方向への進出が可能な構造となっており、上下とも場内信号機の見通しが悪いことから遠方信号機が設置されているため、 単線区間の途中駅に置かれる信号設備としてはフル装備に近いものとなっています。さすがに入換信号機や誘導信号機はありません。
また、信号機とは別に、1番乗り場のホーム下にある転落検知マットの警告灯が2箇所の信号柱に設置されています。
構内の様子
北野駅の駅舎です。甘木駅と並んで大変レトロな佇まいです。写真の通り駅前の広場は皆無に等しく、駅前の道も大変細いため、送迎時の待機はできなさそうです。 広い道に出て少し東に行くと市の施設やセブンイレブン、南の方に北野天満宮があります。
駅前から細い路地を進んで線路沿いの方に曲がると、下り場内信号機があります。2個ある灯器のいずれも2灯式で、停止現示と進行現示を出すことができます。 一段高く掲げられているのが1番線(宮の陣・久留米・大牟田方面の列車が使用)の場内信号機、下にあるのが2番線(甘木方面の列車が使用)の場内信号機です。 現行ダイヤの定期列車では、甘木方から2番線に入る列車はありません。
上記の下り場内信号機に対応する下り遠方信号機は離れたところにある(線路上の距離で450m、道路だと多少迂回を要して600m)あるため、 取材日には現地に行きませんでしたが、2015年10月4日に走行中の列車内から撮影した写真がありましたのでご紹介します。
対応する場内信号機が進行現示の時、遠方信号機も進行現示となります。場内信号機が停止現示の時は遠方信号機は注意現示となります。
下り場内信号機観察後の戻り道で、信号機から少し駅寄りに行ったところの線路際に謎の停止位置目標を見つけました。
この印は両数を指定しない全列車に対する停止位置目標で、もしこれを使うとしたら北野駅に到着した列車の入換を実施するような場合だと思われますが、 先述の通り、北野駅には入換信号機がありません。入換信号機なしで入換をするなら、駅の連動制御盤で転轍機を独立に動かし、 操車係の指示と誘導によって作業を遂行することになりますが、現状そのようなことをやる事態があるのか不明です。
駅の改札を通ると、下り宮の陣・久留米・大牟田方面の1番乗り場へはまっすぐスロープで上がれます。 屋根から吊り下げられている乗り場案内には、久留米・大牟田だけでなく、宮の陣や久留米乗り換えで行ける福岡(天神)方面の案内も併記されています。
スロープ下の右手側には構内踏切があり、渡ると上り本郷・甘木方面の列車が使う2番乗り場へ行けます。 ただし、最終の北野折り返し始発・花畑行き普通列車に限り、2番乗り場から下り方向に発車します。
2番乗り場への構内踏切通路の奥側には青色の可動式フェンスがあります。Wikipediaいわく、nimoca導入前まではここが朝時間帯に定期券専用の降車用臨時改札口として運用されていたそうです。 主に駅近くにある福岡県公立三井中央高等学校(久留米市外三市町高等学校組合による運営・公立の女子校)の通学客に主眼を置いたものであったようです。 高校は線路を渡った側にあるのでどこかで踏切を通行する必要がありますが、北野駅の構内踏切に全員が集中して駅舎内までの通路が大混雑するより、 駅前の踏切などに分散した方が安全に速く捌くことができそうです。
その三井中央高等学校の案内看板が北野駅前に設置されています。 しかし、その三井中央高等学校も定員割れや各自治体の財政の厳しさにより、2023年度入学をもって募集停止となっており、 今年度入学者が卒業する標準年限が経過した2025年度末をもって閉校することが決まっており、各自治体ですでに運営体の解散手続に関する議決がされています。
構内踏切の手前から下り宮の陣(久留米・大牟田)方を見ます。下り方の分岐器は綺麗な形の両開き式です。 綺麗な両開き式分岐器は、他には貝塚線の和白駅にしかありません。この他、柳川駅の1番線・2番線の着発線振り分け分岐器が両開き状ではありますが、 通過列車がある駅の着発線には設置されていません。天神大牟田線の単線区間の駅はどちらか1線を直線として分岐器通過速度制限をなくし、 さらに一線スルー方式で運用して優等列車を上下とも高速通過できるようにしています。
ホームは乗降口の部分が少し線路側に張り出すよう、強化ゴムにより縁の部分が作られています。それ以外の部分は固定柵で封鎖されています。 乗降口以外の箇所をここまでガチガチに封鎖している駅は現時点では他になく、可動式ホーム柵の工事がようやく本格化した福岡(天神)駅が 1~2年のうちにこのような感じになるのではないかと思います。
線路はホームの途中から急曲線を描き始め、曲線の甘木側終端部付近で2つの着発線が合流します。こちら側の分岐器は1番線が直線側となる片開き式です。
1番乗り場側のスロープを少し上ると、出発信号機2基がよく見えます。写真右側、1番線の甘木方への出発信号機の下には、転落検知マットの動作警告灯がぶら下がっています。
写真を拡大表示すると分かりますが、写真奥にある分岐器の分岐側速度制限は15km/hとかなり低くなっています。 これは本郷駅と学校前駅の片開き分岐器でも同様の速度制限がかかっています。
1番乗り場から線路を挟んで反対側の2番乗り場を見ます。昔からある木製の長いベンチと、最新鋭といえる固定柵・隙間縮小ゴムの対比ができます。 このゴムは「くし状ゴム」と呼ばれる構造のようで、日本国内の各所の駅で隙間縮小対策として導入されているとのことです。
こうして見ると、固定柵がホームの大部分を塞いでいてかなり物々しい感がありますが、この対策により予期せぬ転落リスクが低減されています。
2番乗り場側から見ても固定柵がかなりゴツいです。あまりのゴツさに固定柵がらみの写真ばかり撮っていて、信号機の写真が置き去りになっていたと後で判明しました……
1番乗り場の下、ホームと線路の間に敷かれている細長いものは転落検知マットです。マットで何らかの重い物体を感知した時に警告灯が(おそらく警報音も)作動するようになっています。
2番乗り場に列車が停車している時の様子です。曲線上に位置する甘木方について、特に車体両端にある扉のところの隙間が広くなっているのが分かるかと思います。 車体が直線状である以上、ホーム自体を張り出してしまうと間違いなく擦ってしまう(それゆえ建築限界や車両限界により寸法が規定されている)ため、 隙間を埋めるゴムにより擦るか擦らないかのギリギリを攻め、もし車体揺動などにより擦ってしまったとしても車両が損傷することのないようにしているようです。
また、固定柵により、2両編成で運転する列車が常時閉鎖する車体中間の扉部分(4ドアの7000形であれば2箇所、3ドアの7050形であれば1箇所)が塞がれているのが分かります。
2番乗り場の甘木方乗務員室の位置には、ホーム面に「此の戸・他の戸操作」の標示があります。同様のものが1番乗り場も合わせて他3箇所、先頭の位置にあります。
これは、甘木線の北野・甘木両駅を除く各駅が集中管理化されるまで、終日無人駅と時間帯無人駅の無人時間帯は先頭車の前後の扉しか開けない取り扱いとなっていたことによるものです。 終日有人駅である北野駅と甘木駅では常時全車両の扉を開閉するため、後部車両の扉開閉を忘れないようこの標示がされていました。 なお、他駅の無人時間帯は車掌スイッチ(扉扱いスイッチ)に2つある操作ボタン(バー形式)のうち「此ノ戸」(自車開閉)側だけを扱い、 「他ノ戸」(他車開閉)側には誤操作防止ブロックを付けていました。
集中管理化後の現在は、時間帯無人駅と終日有人駅の別を問わず、終日全車両の扉を開閉するようになったため、この標示には特段の意味は無くなっています。
北野駅の下り出発信号機です。1番線向けが線路左手・2番線向けが線路右手に建っています。1番線向けの下り出発信号機の下に転落検知マットの警告灯が設置されています。 また、信号機手前のホーム陰となる部分に、甘木起点12K500mのキロポスト(乙号距離標)が建っています。 後部確認用のミラーが両方に設置され、2番乗り場側のフェンスには分岐器の制限速度が25km/hである旨の制限標がついています。 一方、1番乗り場の先の架線柱には速度制限解除の標示があるので謎です。
ホーム面には、利用客に対する注意4か条「(長い物を)立てかけない」「のりださない」「かけこみ禁止」「(線路内に)立ち入らない」が、 日本語・英語・韓国語・中国語(簡体字)の4か国語で書かれています。不正乗車に対する各駅の警告掲示は韓国語の代わりにベトナム語が入っているので、 全部合わせると5か国語による案内がされています。しかし7000形・7050形の放送とLED車内案内表示は日本語のみです。
最後に北野駅での列車交換風景です。下り大牟田行が先に来て、そのすぐ後に上り甘木行が到着します。ちょうど7000形と7050形のトップナンバー車が並びました。
他の駅の情報
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